経営者のための決算書の見方、読み方、使い方の最近のブログ記事
経営者のための決算書の見方、読み方、使い方
「決算書を読めるようになりたい」と思っている経営者やビジネスパーソンは意外に多いものです。
しかし、「時間がない」「数字が苦手」などの理由であきらめてしまっているのが現実です。
実は、税理士である私も何を隠そう決算書の見方がよくわかりませんでした。
しかし、あることに気づいたとき目が覚めました。
たったこれだけでいいのかと。
決算書で知るべきことは、『儲かっているか、お金はあるか、つぶれないか』のこの3点に絞られています。さらに見方がわかれば、決算書は今後の経営改善にも役立つまさに宝の山です。
決算書が分かるとこんなにメリットがあります。
・ いままで見えていなかった会社の現状が手に取るようにわかる。
・ 会社の長所、短所を把握できる。
・ 経営方針が明確になる。
・ 経営改善のために打つべき手の優先順位がわかる。
・ 税務署や銀行のためでなく、会社にとっての意思決定の結果がわかる。
・ 本当のお金の使い方が見えてくる。
・ 融資を受けることができるか、銀行が会社をどう見ているかわかる。
・ 会社をよくしたいという思いがわきあがる。
・ 決算書に対するモヤモヤ感がなくなる。
・ 経営計画が立てやすくなる。
・ 社長から幹部への会社の現状説明が行いやすくなる。
・ 改善目標が明確になるので社員の士気を高めることができる。
・ 少々売上が下がっても許容範囲内の売上減には動じなくなる。
・ 株式投資にも役立つ
これから起業するあるいは起業して間もない方にもまずは会社の仕組み、社会の仕組みを理解する上で必要な“使える決算書の読み方”をレクチャーしていきたいと思います。
誰にでもわかるように簡潔に説明していきます。そのツールとして『決算すっきりシート®』を使用していきます。
決算書はツール
決算書はツールです。決算書が何のために、どういう仕組みになっているかがわかれば会社の舵取りもうまくいきます。
どんな会社でも、どんなにいい業績の会社であってももっと利益がほしいと考えるものです。儲ける方法または儲からない理由を探す有効なツール、それが決算書です。
決算書は一見すると数字の羅列で無味乾燥のようにみえます。これが多くの人を決算書嫌いにさせている原因です。
しかし、この数字の元になっているのはその会社にかかわった経営者、従業員、取引先等人間の行動からきています。その結果が数値となって表れたのが決算書です。
個人でもお金の使い方でその人の価値観や行動がわかるのと同じように、会社も決算書をみればどういう活動をしてきたのか一目瞭然です。
つまり、この無味乾燥とした数値を読み解いていけば、もっと儲けるにはどうしたらいいのか、なぜ儲からないのかの理由が探し出せるのです。
決算書は宝の山なのです。
決算書の構成
決算書とは『貸借対照表』『損益計算書』『キャッシュフロー計算書』の3つのことをいいます。
貸借対照表は、資産、負債、資本を表示します。
損益計算書は、収益、費用を明示し、儲けがいくらかを表示します。
キャッシュフロー計算書は、現金の出入りを表示します。
決算書は3つに分かれていますが対象となる会社は1つです。3つの書類はそれぞれが独立しているわけではなく、関連性をもっています。ひとつの会社を3つの視点で捉えることによって本当の姿が浮かび上がってきます。
決算書で経営者の悩みを解決する
(1)儲かっているか
「儲かっているか」の指標は経営安全率です。経営安全率は利益面での業績のよさがわかる指標で、
経営安全率=経常利益÷限界利益
という算式で計算されます。
「売上が○○%落ちて損益トントン」という数値で会社の業績を把握することができます。たとえば経営安全率8%の会社は、「8%売上が落ちても損益トントン」ということです。経営安全率が高いほど、会社は儲かっています。
<具体例>
ABC商事の限界利益(※1)は665百万円、固定費は556百万円、経常利益(※2)は109百万円とすると、この会社の経営安全率は109百万円÷665百万円=16%となります。
つまり、あと16%売上が落ちて損益トントンということです。
ここで注意することは「経常利益の絶対額で判断しない」ということです。年商200億円の会社と年商1億円の会社の経常利益の絶対額で比較しても意味がないからです。しかし、経営安全率という割合で比較すれば、規模が200倍違う会社でも容易に比較できます。
売上は放っておくと減ります。会社の売上は減るようにできています。このことを前提に経営安全率に着目し、「どれくらい売上が減ると損益トントンになるか」を常に把握しておくことが重要です。
経営安全率は15%以上を目指しましょう。
※1.限界利益=売上-変動費(仕入や材料費など売上に比例して発生する費用)
※2.経常利益=限界利益-固定費(人件費など売上に関係なく発生する費用)
(2)お金はあるか
「お金があるか」の指標は自由資金比率©です。自由資金比率©は増えた利益の中に自由に使えるお金がどれくらいあるかがわかる指標で
自由資金比率©=フリーキャッシュフロー÷自己資本増加額
という算式で計算されます。
増えた利益の中に自由に使えるお金がどれだけあるのかを示します。すなわち利益がお金として手元に残る割合を表しており、高いほど資金繰りはよくなります。
<具体例>
ABC商事の自己資本増加額(※1)は50百万円、売上債権・在庫固定資産投資は30百万円、フリーキャッシュフロー(※2)は20百万円とすると、この会社の自由資金比率©は20百万円÷50百万円=40%となります。
つまり、利益のうち自由に使えるお金の割合は40%ということです。
ここで注意することは「1年間の比率ではなく、5年間の平均値でみる」ことです。会社が活動を行っていれば数年に1度多額の投資を行うこともありますので必ず5年間の平均値で確認するようにします。
自由資金比率©の高い会社は資金繰りも楽になり、経営も安定して倒産しにくい会社となり、信用も高まります。
自由資金比率©は100%以上を目指しましょう。
※1.自己資本増加額は、増資がなければ税引後の「当期純利益」
※2.フリーキャッシュフロー=営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー
(3)つぶれないか
「つぶれないか」の指標は自己資本比率です。自己資本比率は総資本の中に返済不要の自己資本がどれくらい占めるかを表す指標で
自己資本比率=自己資本÷総資本
という算式で計算されます。
自己資本比率は必要な資金のうちどれくらいを自力で調達しているのかを示します。自己資本比率が高いほど経営は安定し、つぶれにくい会社となります。
<具体例>
ABC商事の総資本(※1)は430百万円、他人資本は136百万円、自己資本(※2)は294百万円とすると、この会社の自己資本比率は294百万円÷430百万円=68%となります。
自己資本比率の増加は他人資本の減少つまり借入金の減少、借入金に依存した資金繰りからの脱却です。
自己資本比率が小さいと会社は信用されず、銀行も融資を控え、ますます資金調達が困難になり、倒産の危険度が高まります。
自己資本比率は40%以上を目指しましょう。
※1.総資本=他人資本(借入金等)+自己資本
※2.自己資本=資本金+剰余金
上記3つの指標は互いに深く関係しています。
経営安全率が高くなるのは経常利益が大きくなったときであり、利益が増えれば剰余金すなわち自己資本が増加します。
自己資本は自己資本比率の分子ですから自己資本が増加すれば自己資本比率が大きくなります。
つまり、経営安全率が大きくなるとその結果、自己資本比率も大きくなります。
また自由資金比率©が大きくなるのは、売上債権や棚卸資産、固定資産をコントロールしてフリーキャッシュフローが増えたときであり、これは貸借対照表の資産、つまり総資産が減少する状態です。
総資産が小さくなるということは自己資本比率の分母が小さくなることですから自己資本比率は大きくなります。
つまり、自由資金比率©が大きくなると自己資本比率も大きくなります。
経営安全率が大きくなると自己資本比率の分子が大きくなり、自由資金比率©が大きくなると自己資本比率の分母は小さくなります。
その結果、自己資本比率はアップします。
つまり経営者の一番の願いである「会社をつぶさないこと」はまさに自己資本比率を高めることであり、自社だけでなく取引先の経営状態も判断できます。
経営改善の5つのポイント
3つの指標をよくするためにはたった5つのポイントしかありません。
(1)限界利益のアップ
(2)固定費のコントロール
(3)売掛金・受取手形のコントロール
(4)在庫のコントロール
(5)固定資産のコントロール
経営安全率を高めるには(1)(2)、自由資金比率©を高めるには(3)(4)(5)、その結果、自己資本比率もよくなります。
◆経営安全率を高めるには、限界利益をアップし、固定費をコントロールする必要があります。
実務的には限界利益アップ策と固定費コントロール策の両方の組み合わせで行います。
たとえば現在、限界利益が138百万、固定費が127百万円で経営安全率が8%だとします。限界利益を5%上げて(138百万円→144.9百万円)、固定費を3%下げると(127百万円→123.2百万円)、経営安全率は8%から15%になります。
◆自由資金比率
©を高めるには、売掛金・受取手形のコントロール、在庫のコントロール、固定資産のコントロールが必要となります。これも経営安全率と同様に組み合わせて行います。
たとえば、自己資本を20%増やして(5百万円→6百万円)、資産の増加を40%減少できると(3百万円→1.8百万円)、自由資金比率©は40%→70%になります。
これらは、経営計画策定の際にも大いに役に立つことでしょう。